間づくり研究所の所長である塚本直之が、こどもみらい探求社の代表である小竹めぐみさんと小笠原舞さんに子育てをテーマに対談を行いました。
対談者プロフィール
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合同会社こどもみらい探求社 共同代表
小竹めぐみ
Megumi Kotake保育士として現場で勤務後、フリーランス、NPO法人設立の経験を経て、2013年に合同会社こどもみらい探求社を設立。人の持つ凸凹とした個性を愛し、日々の小さな変化を楽しみに暮らしている。
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合同会社こどもみらい探求社 共同代表
小笠原舞
Mai Ogasawara大学では福祉を学び、社会人経験を経て、保育士となる。こどもたちから得た学びを広げることが、「Well-being=誰もがよりよく生きる社会」につながると思い、子育てコミュニティの立ち上げを経て、2013年に合同会社こどもみらい探求社を設立。
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間づくり研究所 所長
塚本直之
Naoyuki TsukamotoCOMANYが目指す 「関わるすべての人の幸福に貢献する経営」 を実現するた め、同社の経営にSDGsを実装したサステナビリティ経営を推進。 現在は、間 づくり研究所の所長として間づくりの浸透を推進している。 趣味はロードバイ クで、休日は山に向かって走るのが何よりの楽しみ。 最近は畑も始めた。
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間づくり研究所 研究員
田中克政
Katsumasa Tanaka1991年入社のバブル社員です。20代は情報システム部門で新基幹システム導入、30代は経営管理からIRなども経験、40代は人事、教育部門、50代で現職についており、管理部門の殆どを経験してきました。仕事以外では軟式野球部の部長も兼任しており、グラウンドの片隅で邪魔にならないように動いています。最後に大の阪神ファンです。
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間づくり研究所 研究員
中田怜
Rei Nakada入社12年目。入社後、人財開発課に所属し、産休明けからは総務課に所属。現在は、健康診断等の『健康経営』を主に担当しています。従業員が心身ともに健康で明るくいきいきと過ごせるよう、健康維持増進に向けて日々取り組んでいます。育児と仕事に奮闘しつつ、家族3人で日々成長しています。私の癒しは、3歳の息子です。
保育園を飛び出し、子どもや家族にまつわる間づくりを実践
塚本:お二人は保育士起業家として、様々な企業や自治体の方々と共に子どもや家族をキーワードに事業を展開されていますよね。
小笠原:保育士の枠を超え、子どもや家族についての間をつくる存在として、様々な企業の方々と関わらせて頂いています。
塚本:今の弊社に少し似ているかもしれません。単なる間仕切りメーカーの枠を超えて業態がわからなくなってきています。
小竹:勝手ながら同じ空気を感じています。コマニーさんも、業種問わず色々な企業や自治体と協業されていらっしゃいますよね。
塚本:今はそういう時代ですよね。一言で保育士さんと言うと、保育園で毎日子どもと一緒に過ごされているイメージですが、お2人の仕事はその言葉で定義するとボロボロとこぼれ落ちてしまいますね。どのようなきっかけで現在のような活動を始めたのか、自己紹介をお願いできますか?
子どもはただ生きているだけで特別な存在
小竹:10年ほど前、それぞれ現場で保育士をする中で、子どもを取り巻く課題に直面していました。ありのままの子どもの個性を生かすには、保育園を越えて、環境ひいては社会を変えていかなければいけないと色々なところで話をしていたら、共通の友人が同じ考えを持つ小笠原と引き合わせてくれて、共に歩むことを決めました。以来、子どもたちのためにやれることを1つずつ形にしたいと、イベントや企画を始めました。
小笠原:私は幼少期より、ハンデのある友人や外国に住む親戚の影響から違いについて肌で感じながら育ち、大学で福祉を学びました。どうしたら差別なく皆が幸せに暮らせるのかを考えた時、自分らしく生きる子どもがそのまま成長すれば、目指す社会に近づくのではと思い、一般企業に勤めた後に25歳で保育士になりました。その後、それでも解決できないものに取り組みたいと、小竹と共に独立して今に至ります。
プライベートでは、年長の6歳の息子と2歳の娘(2024年10月現在)と、神戸市長田区の下町で暮らしています。多文化共生を掲げている町で、様々な国籍や年代、バックグラウンドの方と関わりながら暮らしています。そんな環境がお気に入りで、自宅隣に2023年からゲストハウスを運営しはじめ、家族を開放しています。
小竹:私は大学の保育科を出て、保育士になりました。父の存在が絶対的な家庭で育ち、思春期からはそんな関係性に疑問を感じ、1人で様々な国を旅しては、ホームステイのように家族の日常的な生活の中に長い間お邪魔して、その関係性を観察していました。世界の人々の暮らしを文化人類学やフィールドワークのような視点で眺めていたんですね。
保育士として働く中で、子どもたちが一人ひとり様々だということを改めて学び、それを活かすためにも環境や社会を作っている人と手を取り合い、協力し合うことが必要なのではと独立を決意しました。また、私自身が発達障害で偏った人間でもあるため、自分に合った働き方や生き方を自ら作ることを大事にしていて、沢山の違いを補い合う関係性をとても大切にしています。
小笠原:役割や個性、得意分野は全く違う2人ですが、私たちに共通するのは、子どものありのままの個性を活かすために、その環境を整えることに力を注ぎたいという点です。
保育士的な視点で取り組む、企業や自治体とのプロジェクト
小竹:弊社のメイン事業は企業とのコラボレーション事業です。鉄道会社やマンション関連、地域づくりなど、様々な自治体や企業様からのコミュニティ作りや実態調査の依頼に加え、アプリやサービス、教材の企画開発など、本当に色々な案件があります。それぞれの課題に対して、子どもと家族を巻き込む仕掛けをご提案しています。実は、全ての業界が子どもや家族に関係しているんです。新しいものを生み出したい、既存のものをどうしたらより良くしていけるのかを考えたい企業や自治体からのご相談に対し、寄り添い、一緒に考えていくのが私たちの役割です。
日建設計様の事例では、都市作りに子どもの視点を取り入れるべく、子どもと一緒に渋谷を歩き、そこで得た知見を開発に生かすお手伝いを行いました。研究員の方たちが凄くメモを取ってくださっていて、その光景に感動したのを覚えています。全てを新しくしてしまおうとか、面白くなればいいのではなく、元々持っている個性を大事にするのが私達の考え方です。そこは保育士スピリットですね。
中田:他と比べて劣っていると思う部分や、普通ではない部分を隠してしまう企業や自治体さんも多そうですが、企業や地域の個性をどうやって探されていますか?また、引き出すにあたり気をつけられていることはありますか?
小竹:まず見つけたいのは、他と違うところです。「実は長年の老舗じゃなくて‥‥」「こんな田舎で‥‥」など、その個性をマイナスに捉えてしまう方々が多いですが、側から見るとむしろそれが面白いんです。私達はいつも「球体で物事を見よう」と言っているのですが、側面だけを見て判断せず、あらゆる角度から見て、どこに焦点を当てるかを決めていきます。はじめの観察やヒアリングありきなので、そこを凄く丁寧にやる必要がありますね。
仕事に私情を挟んではいけないと思っている大人が多いですが、自分の個性や好みを出さずに事業を成功させるなら、AIと仕事した方が良いはずです。会社の仕事だとしても、その人が代表として担当しているからには思いを乗せて、自分を出してもらいたいです。
失われた子ども心を取り戻す、研修事業
小竹:そんな状況に対しても有効なのが、職員や保護者、企業向けの研修です。例えば、社員の頭を柔軟にしたい、クリエイティビティをUPしたいなどの要望や、ウェルビーイングの一環で社員の幸せをサポートしたいなどの需要に対して、講演やワークショップを行います。特にコロナ禍には、オンラインで新しい形の福利厚生を提供するサービスが増加しました。
日々社会で働いていると足りなくなりがちなのが、創造力、瞬発力、勇気、自己肯定感など。感覚的なアプローチでこれらを見つけて実感してもらい、時間をかけて構築的に足りない力を作り込んでいきます。
中田:(事例の写真を見て) これは何をしているんですか?
小笠原:これはチャイルドビジョンと言って、車メーカーが出している、子供の視界を体験するツールを試しているところです。こんな風に、凝り固まった思考を溶かす様々な仕掛けを研修に詰め込んでいます。課題を見つけてプレゼンするワークや研修など、色々なバリエーションがあります。
中田:気づかぬうちに固定概念が生まれてしまいがちですよね。以前、人財開発課で新入社員への研修を行なったのですが、普通はこうしないだろうと決めつけて、それぞれの社員の良さや個性を見ていなかったかもしれないと感じました。今、総務課では従業員の心と体の健康のためのサポートを行なっているため、お二人のお話から学ぶことが多そうです。
小竹:担当者の方が幸せなら、それが多くの人に連鎖して広がっていきますよね。企業の中で社員を幸せにしようとしているウェルビーイングの担当者の方が、全然幸せじゃないケースもあります。保育園でいうと、個性を出せずに働いている担任の先生が、子どもの個性を引き出そうとしている。よくも悪くも、大人の価値観は子どもたちにそのまま伝わるし、子どもは大人の背中を見て育ちます。
小笠原:私たちがB to Cでやっていることは、社員の人事関連の研修にも活かして頂けるかもしれません。子育ての話は会社でなかなかしませんが、人となりや本音が出やすいので、お互い共有し合うことで仕事のチームビルディングにも良い影響が出ると思います。
小竹:例えば研修の中には、まさかのものを参加者にいきなり配って、自分で遊びを作ってもらうプログラムがあります。本気になると大人もよくわからない遊びを数分で考えたり、参加者の中から投票で優勝者を決めたりすると、一気に距離が近づいてみんなでゲラゲラ笑うんです!
小笠原:子どもたちは、無意識にこれが出来ているんですよね。その中で個性が垣間見えてきたりします。
塚本:自由にありのまま生きている子どもたちから、我々大人が学ぶことが沢山ありますね。

