間づくり研究所の所長である塚本直之が、こどもみらい探求社の代表である小竹めぐみさんと小笠原舞さんに子育てをテーマに対談を行いました。
対談者プロフィール
親子で取り組むプログラム “おやこ保育園” の誕生
小竹:「子どもと先生がいたらもう保育園」という思いつきのもと、私たちが良いと思うものだけを詰め込んでスタートしたのが、自主事業の”おやこ保育園”です。保育園とうたってはいますが、いわゆる常設園ではなく、月に2度ほど親子で参加する3時間の講座で、約半年で全10回を終えるものです。開始当時は、ワンオペ育児や産後うつなどの問題が表面化してきた頃でした。おかげさまでとても好評で、プログラムが書籍化され、その本がご縁で東京の調布に実際の保育園も生まれました。
小笠原:コロナ禍でリアルからオンラインに切り替えたことで、遠方のご自宅や海外から参加してくださる方も増えてきました。
中田:保育園は子どもを預ける場所というイメージでしたが、面白い取り組みですね。子育て世代として、ぜひ参加してみたいです。
小笠原:今の親子の実態に触れ続けられるこの取り組みがあることで、感じたことや得たことを、会社さんとの事業にも活かせていますね。逆もまた然りで、良い連鎖を生み出せていると思います。
子どもに学ぶこと、大人が教えられること
塚本:お2人は何にも囚われない子どもという存在から、世界を捉えてらっしゃいますね。一方でリスクを取らずに我慢して、自分らしく生きられていない大人が多いように思います。どうしたら一人ひとりの個性が光り輝くような生き方ができると思いますか?
小笠原:誰しも子ども時代はありのままの個性で生きていたので、大人も同じように生きることはできるはずなんです。きっと成長過程でその生き方を封印しているか、忘れているか。社会なのか仕事なのか、答えは1つではないですが、保育士として培った知見でできるアプローチを続けることで、大人が自分らしく生きることをサポートをしていきたいと思っています。会社のミッションにも「大人こそが個性を大事にして活かし合う社会を体現する」を掲げています。
小竹:私は研修やおやこ保育園の中で、まずは親御さんにOKサインを出してあげることを大切にしています。どう出すのかいうと、私達自身が丸裸で挑むんです。最初の瞬間から本当に自然体でいることで、親御さんたちが「それでいいんだ!」と、どんどんリラックスして、表情が変わり、小さなことが気にならなくなるんです。余裕が出て自分らしさを取り戻すと、日々の子育てで忘れていたけど、こういう場所に行ってみよう、子どもが好きなものばかりじゃなくて自分も楽しもうと、自分の好きなことを暮らしに取り入れ始めます。そんな大人の背中を見て子どもが育つことで、良いチェーン現象が生まれます。私達がやろうとしているのは、その全ての始まりを作るための、きっかけづくりなんです。
塚本:子どもたちが大人になるにつれて、個性を出さなくなってしまう理由は何だと思いますか?
小竹:こう思われるのではないか…という恐怖だと思います。不安な部分と向き合うステップも大事ですよね。私達はよく「大人スイッチ/子供スイッチ」と言うのですが、時間を守るなど、時には大人スイッチを発動することも必要ですが、自分らしくいたい局面では子どもスイッチを発動して、自分の個性も出していく。まずは自分の中にどちらもあることを認識して、使い分けると面白くなると思います。逆に子ども達には、大人スイッチの角度をちゃんと伝えていかなければいけないですね。
塚本:なるほど。多くの人は、子どもスイッチをただ切ること=大人スイッチだと勘違いしているかもしれないですね〜。
小竹:確かに現代の大人の社会では、大人スイッチばかり入りがちですよね。
はじまりは観察から。間づくりと子育てに共通するオリジナリティの見つけ方
小竹:お仕事の中には同じ自治体や企業様の案件もありますが、担当者さんによって全く違っていて、1つとして同じものはありません。保育で言えば、同じ2歳女児でもこの子とこの子は違うし、今日は1年前とは違う。その違いに敏感であることが、サポートをしていくのに重要だと思います。
小笠原:隣の家に行くだけで、文化の違いはありますよね。そこが面白いところです。
塚本:お2人が、そういった見方を出来るようになったきっかけはありますか?
小竹:保育園の子どもたちが一人ひとりあまりにも違い、同じ子が1人としていなかったからです。「本来人ってそうなのか」って思うんです。それは大人でも、自治体や企業様でも同じことで、業界などで括らずに全てを見渡して、今どういうスタートラインにいるのかを見極めてから始めたいんですね。
塚本:僕達も間づくりや、間を考える上でとにかく観察を大事にしています。先ほどお話にも出た、球体のようにあらゆる角度から物事を見るために、具体的に行っている方法はありますか?
小竹:質問の角度を変える、少し時間をおいて何度か質問する、今ではなくこれまでのことをお聞きするなどです。型にはまっていない言葉が欲しいので、直接話す機会もすごく大事にしています。知りたい気持ちを少しでも持ち続けることも大切ですね。日々探求です。
違いを知り、認め合う関係性はどう生まれる?
田中:お2人の著書の中の「でこぼこを知る」という部分に、知ることも、認めてあげることも、そういった世の中作ることも大切だと書かれていましたよね。僕は相手が自分に持ってないものを持っていたりすると、知らず知らずのうちに相手を敬遠してしまったりするのですが。
小笠原:研修にも、そういった方向けのワークがあります!保育現場でも社員同士でも、なかなか強みは言えても、弱みは恥ずかしくて隠してしまいがちです。不思議ですが、それを自分から公表すると、周囲の人も受容できたりするんです。見える化をすることで大人もスムーズに助け合えるんですね。
小竹:強みばかりを見せられると、こっちも弱みを出しづらくなってしまったり、得意分野で勝負しなければいけないような気になりますよね。実は弱みこそ生かしようなので、どの地点から始まるかは結構大事ですね。
塚本:弱みのない人はいなし、完璧じゃないから愛おしいんですよね。同時にそれを躊躇なく出せる人は、自分に対しての自信や信頼があるようにも思えます。それはどうしたら身につけられると思いますか?
小竹:その場を許容度の高い場であると思ってもらえるかはすごく大事なことだと思っています。そのためにも多様性が垣間見える場作りの工夫はしますね。色々な言い方や仕掛けで、自由度を上げていきます。
塚本:その場の自由度を上げるほど逆に、どうする?って、お互いに探り合いが始まることもあると思いますが、そこはどうしたら乗り越えられると思いますか?
小竹:その探り合いも、1つのプロセスですよね。それぞれあるみんなの意見を擦り合わせて「あ、そっか!」ってなった後、絶対みんないい表情になっているはずです。
小笠原:周りにあわせるのではなく、小さなことでも自分で選んでみる。伝えてみる。そしてそれが受け入れられた!という経験を積み重ねていくのが重要ですね。私達はよく、「今自分はどうしたい?」と問いかけます。それがわかればその人なりに安心感を積み重ねて、自己肯定感が上がっていくと思います。
塚本:強みや弱みも含め、一人ひとりが安心して自分のありのままを出せる関係性を作ることで、よい間が生まれそうですね。