間づくり研究所

2024.10.30

間づくり研究会リポート~センターオフィスの間づくり~

7月1日に行われた「間づくり研究会」では、「センターオフィスの間づくり」というテーマで、コマニーの本社事務所のリノベーションの詳細が共有されました。
このプロジェクトは2023年7月にスタートし、従業員の自主的な立候補により結成され、企画から設計・デザイン・工事管理までをすべてチームで行っています。この主体性とオフィスで働く当事者としての企画力で発想を広げ、本社としての機能やあり方を検討し、従業員が誇りをもって働ける環境を実現しました。建屋は築39年ながら、耐震調査の上問題なく使用できることを前提に、リノベーションという選択肢をとりました。

プロジェクトリーダーと製造・管理・企画・営業など多様な部門から立候補したメンバー

今回の研究プロジェクトの背景とコンセプト

まずは、リーダーから今回のリノベーションの背景やコンセプトについて発表がありました。コマニー株式会社が過去に本社事務所の建て替えを計画していたものの、社会情勢の変化や経済的な制約から実現が難しい状況にありました。しかし、従業員は「建て替えなくてもリノベーションによって理想のオフィスを作り出せるのではないか」という考えに至り、本社事務所は築39年を迎え、老朽化が進んでいましたが、それでも新しい発想と工夫によって、オフィス空間を一新することができるという想いがあり、この研究がスタートしました。

研究の開始にあたり、社内公募によって選ばれたメンバーは、リノベーションに関する専門知識がないながらも、自分たちのオフィスをより良いものにしようと意欲的に取り組めました。従業員一人一人が「間づくり研究員」としての自覚を持ち、オフィスを自分たちで作り上げること、そして研究メンバーは、オフィスを私物化せず、全員にとって価値のある空間を創造するための議論を重ねながら、進めていきました。

観察とアクション

まずはリノベーションの対象となるオフィスの現状を詳しく観察し、課題を洗い出しました。オフィス内には物理的な仕切りが多く、コミュニケーションが阻害されている点や、社員同士の距離が物理的にも心理的にも遠く、外部の人々が入り込みにくい環境がつくられていました。

この観察の結果、社員間のコミュニケーションを促進し、オープンで明るい空間を作り出すことがリノベーションの主要な目標として設定されました。リノベーション後は、オフィス内のパーティションを減らすことで、物理的な仕切りをなくし、視覚的にも開放感を持たせるように設計されました。また、オフィス内の動線を見直し、社員が自然に交流できるようなスペースを増やすことで、コミュニケーションの機会を増やす工夫が施されました。

さらに、アンケート調査を通じて社員の声を集め、そのフィードバックを基に、より良いオフィス環境を実現するための具体的なアクションが取られました。例えば、コミュニケーションが取りにくいとされていたエリアに対しては、配置の見直しや新たな交流スペースの設置が行われ、社員同士が気軽に話しかけ合える環境が整えられました。これにより、社員同士の絆が深まり、より一体感のある職場が生まれています。また、観察から得られた知見をもとに、空間の明るさや使い勝手を向上させるための工夫も行われました。特に、自然光を取り入れるデザインや、閉鎖的な空間を解消するためのレイアウト変更が、社員の働きやすさを大きく改善しました。これにより、社員がより快適に、そして効率的に働ける環境が整いました。

コンセプトはWeave Park~ 1人1人が織り成す、新たな間づくりの原点~です。「Weave」は「紡ぐ」を意味し、コマニーの歴史や社員同士、周囲の方々との関係性を紡ぐものです。また、「Park」には公園のような遊び心を込めました。

具体なリノベーション内容

リノベーション内容の紹介は当日、LIVE配信でフロア紹介を行いました。1階のエントランスは、会社の顔として、来訪者に強いインパクトを与えるデザインが施されています。これまで閉鎖的だった会議室は、ガラスパーティションを採用し、開放的な雰囲気に一新されました。さらに、社内のセミナールームも新設され、最大90名が収容できるスペースとして、多目的に活用できるようになりました。これにより、社員や来訪者が集まり、情報交換やアイデアの共有が行いやすくなりました。

2階と3階のオフィスエリアには、グループアドレス制が導入され、社員が自由に席を選んで働ける環境が整えられました。特に2階では、より創造的に働けるスペースや従来通りの島型のスペースとエリアを分けることで、社員がその日の気分や業務内容に応じて、最適な作業スペースを選べるように工夫されています。また、グループアドレス制の採用に伴い、個人の荷物を最小限にするため、すべての社員が共有できるロッカーを設置し、オフィス全体の環境を保つ取り組みが行われました。

3階では、オープンな執務スペースを中心に、コミュニケーションが活発に行われるようなレイアウトが採用されました。特に、キャスター付きの家具を導入することで、従業員が自分たちでレイアウトを変更し、働きやすい環境を自ら作り出すことが可能となりました。この柔軟なレイアウトは、創造的なアイデアを生み出すための重要な要素として機能しています。

さらに、2階と3階にはリフレッシュスペースが設けられ、社員が気軽に休憩を取りながら、自然とコミュニケーションが生まれる場が提供されました。特に、このスペースは他の部署の社員とも交流しやすい設計になっており、部門間の連携強化にも寄与しています。これにより、オフィス全体が活気に満ち、新しいアイデアやプロジェクトが生まれやすい環境が実現されました。

リノベーション後の成果

オフィスのライブ紹介から戻り、最後にまとめの時間となりました。
リノベーションによって、オフィス環境は大きく改善され、社員の働き方にも変化が見られました。まず、リフレッシュスペースの設置によって、他の建屋からの社員も本社事務所を訪れる機会が増え、部門を超えた交流が活発化しました。これまでコミュニケーションが少なかった部署間でも、自然な形での情報共有やアイデア交換が行われるようになり、社内の一体感が向上しました。

また、コロナ禍の影響でテレワークが普及していたものの、今回のリノベーションを機に、社員がオフィスに足を運ぶ機会が増えるようになりました。これは、新しくなったオフィス環境が、社員にとって魅力的であり、仕事に集中できる場として認識されているからかもしれません。これにより、オフィスでの対面コミュニケーションが増え、新たなプロジェクトやイノベーションが生まれる環境が整いました。

さらに、リノベーションによって「間づくり」の意識が社員全体に浸透し、オフィス空間の使い方に対する主体的な取り組みが見られるようになりました。例えば、社員が自発的に家具の配置を変えたり、新しいコミュニケーションスペースを提案したりするなど、オフィスを常に最適化しようという姿勢が育まれています。これにより、社員がオフィス環境に対して自ら責任を持ち、より良い職場を作り上げる文化が生まれはじめています。

最後に

リノベーション後も、センターオフィスの環境は絶えずアップデートされており、社員のフィードバックを基にした小さな改善が日々行われています。例えば、エントランスのレイアウト変更や、社員が利用するスペースの調整など、細かい点でも迅速に対応することで、オフィス全体の快適さが維持されています。これらの取り組みは、社員が自らの働く環境に積極的に関与することで、より良い「間づくり」を実現し続けるための基盤となっています。このリノベーションは、単なるオフィスの改装ではなく、そこではたらく社員が関わることで新しい価値を創出するための一歩として位置付けられています。