間づくり研究所の所長である塚本直之が、こどもみらい探求社の代表である小竹めぐみさんと小笠原舞さんに子育てをテーマに対談を行いました。
対談者プロフィール
子どもの個性はいつ失われる?
千葉:うちの子は幼稚園までは個性丸出しで、どんな子ともすぐに仲良くなっていたのですが、小学生になってから自我が出始めて、すんなり輪の中に飛び込めない自分と葛藤しているみたいです。色々なことを気にしてしまう時期は、成長過程において仕方ないことなのでしょうか?
小竹:子どもにとって大事な関係性は、発達段階において移行しますよね。生後すぐは親との関係を築くところから始まり、次はクラスのお友達。その後また繋がりが広がると、色々なことを意識してだんだん自由気ままにはできなくなっていきます。関係性の構築なんて何も考えていない間は、砂場で一緒に遊んでいる子とすぐに友達になったりしますが、大きくなると、グループが出来ているぞとか、先生にこう言われた、自分はどう見られているのかなど、フル回転で色々なことを考えているはずです。今はそこの移行期なはずなので、見守ってあげてください。
人とのコミュニケーションは大事ですが、大人は「今日はお友達と何をして遊んだの?」「お友達ができた?」など人と人の関係ばかりに着眼しがちです。でも、今世の中で活躍されている方の子どもの頃の話をきくと、1人で黙々と何かをしていたとか、何人かで遊ぶよりも籠っていた方も多いんです。良い悪いではなく、1人の世界を深めることのほうが得意な子もいるので、概念を押し付けず、お子さんがどんな個性を持っているかを眺められると良いと思います。
それでも太刀打ち出来ないと思っていること
塚本:お2人の力をもってしても、上手くいかないなあと思っている課題や、問題意識はありますか?
小笠原:多様性が掲げられ、頭で言葉は知っていても、それを実際に体感できる場所が少ないことが気になっています。例えばダイアログ・イン・ザ・ダーク※で視覚障害の方の目線を体験できることは素晴らしいですが、日々普通に暮らしている中ではなかなか見えづらいですね。また、多くの人の頭の中にウェルビーイングという言語があっても、1人1人捉え方は異なると思います。言葉はそれが実際に何なのかを本当に体感してはじめて意味を持つので、言葉だけが流行って終わらないでほしいですね。
私が神戸の長田市で暮らしている理由は、社会にはハンデを持った人やお年寄り、子ども、外国人など多種多様な人種がいることを、身をもって体感できるからです。個人的にも心地よく、今感じている課題を解決できる可能性にも繋がります。
小竹:私は娘が保育園で覚えてくる言葉や概念がまだ少なく、昭和からあまり変わっていないことを危機感を感じています。女性の生き方に関しても、以前よりは選択肢が増え始めてはいるものの、まだまだですね。何かあるとその都度、そういう人もいればこういう人もいるんだよと、マジョリティ以外の可能性を子どもに伝えるようにしています。
小笠原:子育てに関する制度や仕組みは起業した11年前と比べて改善されてきている一方、個人のしんどさは変わらず、むしろもっと深刻なのかもしれないと思うんです。SNSで他の人と比べて落ち込んでしまったり、働いていると土日休みの子育て広場の利用も難しかったり。パパ向けの企画もありますが、なかなか行きづらい雰囲気だろうなと感じています。虐待や産後うつが増えているというデータもあるので、現状福祉で行われているサポート以外もしていかなければと思います。以前企業経由で子育て中の社員さん向けにセミナーを行った際には、参加者の7割が男性で、普段とは異なる層にアプローチできた実感がありました。
小竹:普通と言われる人の大変さは大きな課題ですね。一歩中に入ると、子供と一緒にいることが辛い人は沢山いるのに、事件になるまでは誰も介入しないし、1人で出来て当然となってしまう。でも、怒鳴って子どもを泣かせてしまうような瞬間って、誰でもきっとあるんです。ボロボロでも明日にはまた普通の顔で、元気に仕事に向かわないといけない。そういう人のために私達もできることをやり続けたいし、一緒に手を取り合ってやってくださる他の方たちがもっと出てくるといいなと思っています。
大人こそ大切にして欲しい、つかの間の休息
小竹:保育園を飛び出して色々な企業の方々との仕事をはじめてから、大人たちが本気で仕事に取り組む姿に感動したんです。商品1つにしても、そこには関わった方1人1人の思いが詰まっている。そんな風に日々、一生懸命に仕事や家事、子育てに取り組んでいる大人は皆忙しいと思いますが、時には子どもたちに一休みするところを見せることも必要です。いつも忙しそうな担任の先生やお母さんを見ていると、生きることって忙しいのかなって思ってしまうんですけど、人生をどう生きるかは人それぞれ。自分を生かすためにも、少しの間を立ち止まって休息して、力を溜め込んで欲しいです。
私達大人にとって会社も個性的ですし、時代もそれぞれの個性を尊重していく方向に変わってきて、予測がつかない時代になってきています。大人はわからないことに弱いですが、子どもたちはわくわくするんですよね。そこは子どもに習い、怯えずにこれから起こるまだわからない明日を、わくわくしながら生きていけたらと思っています。
小笠原:本当に今日は呼んでいただけて嬉しかったです。皆さんの関係性や考えから、素敵な会社なのが伝わってきて、私自身コマニーさんのファンになりました。今日いただいた質問や言葉が現場で具体化されてくるのが凄く楽しみです。
中田:子育てにおいても、仕事においても改めて多くの気づきがあり、改めて目を向けていきたい点が沢山ありました。1人1人の個性が輝く社会を作るために、日々試行錯誤しながら取り組んでいきたいと思いました。
塚本:お話させていただく中で、「違い」という言葉がすごく印象に残りました。世の中の多くの人たちは、共通点を見つけることに集中しがちですが、相手に対しても自分に対しても、他との違いや個性を見て知って認めることも必要ですよね。それをより光らせていくことに対して、大きなヒントを頂きました。僕らは間作りカンパニーとして、これから間を作っていけるか、探求し続けていきたいとより強く感じました。ありがとうございました。
※ダイアログ・イン・ザ・ダーク
視覚障害者の案内により、完全に光を遮断した”純度100%の暗闇”の中で、視覚以外の様々な感覚やコミュニケーションを楽しむエンターテイメント。